寒い季節に活躍する電気毛布やヒーターベストなど、電気の力を使った温熱製品が続々と発売されています。
その多くは従来からある電熱線を使用していますが、実は電熱線に変わる新素材が開発されているのをご存じでしょうか?それはJERNANOが開発した「CNTフィルムユニット」です。
この記事ではCNTフィルムユニットの特徴や活用先などをご紹介します。新しい製品の開発にぜひお役立てください。
開発元・JERNANO(ジェイナノ)の公式サイトはこちら
目次
新素材「CNTフィルムユニット」とは
|
この素材を開発したのは、中国企業のJERNANO(ジェイナノ)です。JERNANO社は長らく課題とされていた「CNTフィルムユニットの量産ノウハウ」を持ち、関連する技術に関して特許を取得。現在までに特許を42件出願し、すでに31件の認可を受けています。
また東京都中央区に子会社のJERNANOジャパン株式会社を設立し、日本企業からの問い合わせにも対応できるよう体制を整えています。今後このCNTフィルムユニットを世界で展開すべく、さまざまな取り組みを行っているところです。
JERNANOジャパンへの問い合わせはこちら
CNT(カーボンナノチューブ)繊維の特徴とは
この温熱素材の元となっているカーボンナノチューブは、名城大学の終身教授・飯島澄男氏が発見した素材です。1991年11月に科学誌「Nature」で発表され、世界の研究者を驚かせました。その後今日に至るまで、世界中で実用化に向けた研究が進んでいます。
この素材はどのような繊維なのでしょうか?主な特徴は次の2つです。
- ナノレベルのチューブ構造
- 軽量ながら「鋼の約20倍」の強度
それぞれの内容をご説明します。
ナノレベルのチューブ構造
1つ目の特徴は、直径がナノメートル(nm)のチューブ構造になっていることです。どのくらい細いのかというと、CNTの直径は約40〜100nm程度。つまり0.04〜0.1マイクロメートル(µm)です。
仮に40nmの場合、人の髪の毛(直径約60µm)の約1500分の1、非常に細いとされる蜘蛛の糸(直径約5µm)の約125分の1に相当します。
またCNTが一層になっている構造を「単層カーボンナノチューブ」、二層になっている構造を「二層カーボンナノチューブ」といいます。素材の使用目的に合わせ、適したCNTを開発できるのです。
このCNTが極細のチューブ状になっていることで、強固な化学結合が実現しています。その結果、熱量が安定しやすいのがメリットです。
軽量ながら「鋼の約20倍」の強度
2つ目の特徴は、軽量かつ高い強度を実現していること。CNTは炭素からできているため、金属に比べて軽量です。その軽さはアルミニウムの半分程度といわれています。
しかしながら強固な化学結合により、強度は鋼の約20倍、電流密度体制は銅の1,000倍以上とされ、高い熱伝導性を有しています。
よって軽くて薄く、熱伝導率の高い温熱素材が作られるのです。
JERNANO開発・CNTフレキシブルヒーターシステムの特徴8選
温熱素材に適したCNTフィルムユニットを使ってJERNANOが開発した「CNTフレキシブルヒーターシステム」。その主な8つの特徴をお伝えします。
1.フィルム全体が発熱する「面状発熱」
1つ目の特徴は、フィルム全体が発熱する面状発熱です。これまで温熱製品に利用されてきたニクロム線などの電熱線は、線状に発熱する素材。そのため線を布地に張り巡らせる手間がかかっていました。
一方のCNTフレキシブルヒーターシステムは、一面が均一に発熱するのが特徴です。よって布地などにフィルム一枚を織り込んでおき、一端から電流をかけるだけで、均一に発熱させられます。温度のムラができにくいのもメリットのひとつです。
2.すぐに発熱する「瞬間発熱」
2つ目の特徴は、すぐに発熱する「瞬間発熱」です。フィルムの一端から電気を流すと、最短1秒でフィルム全体に熱が行き渡ります。温熱製品を使っていると「数分待たないと暖かくならない」ことがありませんか?
この新素材ならば、1〜数秒で温熱製品を温めることが可能です。よって消費者の寒さや暖まりを待つストレスも早期に軽減できます。
3.「超軽量」でインナーなどに利用が可能
3つ目の特徴は、超軽量な点です。CNT自体が非常に軽量なので、これを活用したCNTフレキシブルヒーターシステムも軽量化に成功しています。
肌に近いインナーなど重さが気になる素材への活用にも適しているため、「電熱インナー」などこれまでになかった製品を開発できる可能性があるのです。
またすでに販売されている電気毛布やヒーターベストなどでCNTフレキシブルヒーターシステムを利用すれば、これまでにない軽さを実現できます。「軽くて暖かい」という理想の製品作りに役立てられるでしょう。
4.洗濯機洗いに対応できる「水洗い可能」
4つ目の特徴は、水洗い可能な点です。近年発売されている電気毛布や電気ひざかけなどは、「水洗い可能」とする製品が増えています。しかしその洗い方は基本的に「手洗い」であり、電熱線部分が断線する可能性はぬぐえません。
一方のCNTフレキシブルヒーターシステムは、開発時の実験で40回以上の水洗いに耐えており、洗濯機洗いも可能な性質を持っています。よってこれまで以上に衛生的で気軽に洗えるのです。
5.スポーツでも活用できる「折曲げ耐数10万回以上」
5つ目の特徴は、10万回以上の折り曲げに耐えられることです。従来活用されてきた電熱線は、金属の特性上どうしても折り曲げに弱くなります。
しかしCNTフレキシブルヒーターシステムは折り曲げへの耐性があるため、スポーツウェアなど伸縮性のある衣類への活用が期待できます。
6.衣類にぴったりの「布のような柔らかさ」
6つ目の特徴は、布のような柔らかさがあること。これは非常に薄い点や折り曲げに強い点から実現した、CNTフレキシブルヒーターシステムならではの特徴です。
柔らかさが重要なインナーや薄手の衣類への利用に向いています。
7.スマートウォッチ・スマートフォンを使用した「遠隔コントロール」
7つ目の特徴は、遠隔コントロールが可能なことです。従来の温熱製品は、電源のオン・オフなどを行うコントローラーが必須でした。
ですがCNTフレキシブルヒーターシステムは、Bluetoothオプションを付けることで、スマートウォッチやスマートフォンからの操作が可能になります。仮に製品にコントローラーをつけなかったとしても遠隔操作ができるのが特徴です。
また万が一利用中にコントローラーが壊れてしまった場合でも、スマートウォッチやスマートフォンからが遠隔操作できるので安全性も高まります。
8.使用者の安全を守る「安全対策回路」「低温やけど回避機能」
8つ目の特徴は、安全対策回路や低温やけど回避機能が備わっていることです。温熱製品は電気を利用して一定の温度を保つ特性上、高温になるやけどや長時間の利用による低温やけどのリスクがあります。
こうしたリスクを回避すべく、CNTフレキシブルヒーターシステムでは安全プログラムを搭載。異常な電流が流れたときに電流を遮断する安全対策回路や、経過時間によって通電を自動的にオフできる低温やけど回避機能を付けました。
この機能によって「人が離れてから1時間経ったら電源がオフになる」といった製品が開発可能になります。より消費者が安心して利用できるでしょう。
CNTフレキシブルヒーターシステムの活用
さまざまな機能や特性をもつCNTフレキシブルヒーターシステム。すでに日本でも製品が流通し始めています。
2021年にはクラウドファンディングで「JERNANO次世代スマートヒーター毛布」がお披露目。その結果、目標金額をはるかに超える約1,000万円もの応援購入が集まりました。
参考:Makuake「先進技術で未体験の暖かさ!冬の夜も快眠!JERNANO次世代スマートヒーター毛布」
※このクラウドファンディングはすでに終了しています
今後は次のような製品への活用が期待されています。
インナーやファッション小物、アウターへの活用
非常に薄くて柔らかい特徴から、薄さ重視のインナーやファッション小物、より軽量化したいアウターなどを開発可能です。
スマート毛布や枕など家庭用温熱製品への活用
異常電流を検知し、経過時間によって電源をオフにする安全プログラムが設定されているので、就寝時に使用するスマート毛布やスマート枕へ活用できるでしょう。
腰や首などを優しく保護する理学療法製品への活用
薄くて一面の温度を一定に保てる特徴から、腰や首、ひさなどを保護する医療用製品への活用も期待できます。
寝袋や防湿マットなどアウトドア製品への活用
折り曲げに強く水洗いも可能なため、畳んで持ち運べる寝袋や防湿マットなどのアウトドア製品の開発にも役立てられます。
新素材・CNTフレキシブルヒーターシステムのODM・OEM生産が可能
新しい素材であるCNTフレキシブルヒーターシステムは、ODM生産やOEM生産に対応可能です。すでに中国ではさまざまな企業のブランド製品に生かされています。
今後はさまざまな日本企業とタッグを組み、消費者をサポートする温熱製品が多数開発されることでしょう。
まとめ
CNTフレキシブルヒーターシステムは、CNT(カーボンナノチューブ)の特性を最大限生かした製品作りができる温熱素材です。従来より利用されてきた電熱線と比較して、より幅広い製品作りに活用されるでしょう。
ODM・OEM生産を検討される方は、以下よりお問い合わせいただけます。
JERNANOジャパンへの問い合わせはこちら